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2016-10-18

山旅と規制_その1(台湾で思ったこと)

先月、台湾滞在中に台風17号の直撃を受け、そして、今月初旬、18号と並行して帰国しました。台湾では、玉山(3952m)を日本登攀クラブのOBの仲間たちと楽しく登るつもりでした。日本の台湾統治時代に富士山(3776m)より高い山との測量結果で、「新しく見つかった高い山」ということで「新高山」と呼んだとのことです。日本が「ニイタカヤマノボレ」と発信し、真珠湾攻撃を命令した暗号伝聞として、よく知られています。太平洋戦争の口火を切った暗号ですが、山は、迷惑に思っていることでしょう。現在の「ぎょくざん」は、玉山(ユイシャン、ピンイン:Yù Shān、ウェード式:Yü Shan)です。欧米では、商船主・モリソン(W. Morrison)が報告したことから「モリソン山」と呼ばれているようです。
日本からも4~5日程のツアー登山が旅行各社から出ているようです。とはいえ、日本のように、どの山でも自由に登れるわけでないことは、知っておくべきですね。
玉山は、安全面、ガイドの受入れ態勢、自然保護等の観点もあって、「外国人登山規定」という入山制限があります。出発日が土曜~水曜のツアーのみご利用可能です。また、1日につき最大20名(世界中からの外国人人数)まで先着順となります。それも、入山予定日の4ヵ月前から40日前までが申請受付期間が設定されています。その他にも様々な規制があります。例えば、下記の様な内容です(長いので、抜粋、省略します)。

中華民国山岳協会「外国人登山規定」(抜粋)
(一)中華民国山岳協会は(以下、当協会と称す)外国人の台湾における登山活動への協力のため、「外国人登山規定」を定めた。
(二)山の自然環境と登山者の安全を保護するため、中華民国政府は山地管制区と国家公園に入る登山者に対し、主管機関(警察機関及び国家公園管理処)に入山、入園申請を提出し、許可の取得を義務付けている。
(三)当協会は下記の政府規定に基づき、外国人及び登山隊に対し、山地管制区入山申請、国家公園入園申請、入山許可証取得、入園許可証取得の代行及び公認登山指導員の派遣を行う。
1.機関、学校、団体、一般人は山地管制区で登山、ハイキング等の活動を行う場合、入山許可の申請が必要。
2.台湾三大高山型国家公園(玉山、雪覇、太魯閣)の登山は国家公園法の規定で入園許可の申請が必要。(各山莊により人數制限を行う)
3.3000m以上の山を登る場合、各チーム(1人~11人)にはライセンス(中華民国体育委員会の審査及び登録済みライセンス)を持つ登山指導員1名の同行が必要。11人を超える場合は登山指導員を1名追加。
例.玉山国家公園は入山人数を制限。月曜日から木曜日までは毎日82人(テント持参8名)、金曜日から日曜日までは毎日130人(テント持参48名)。山小屋(排雲山荘)は寝具の提供をしない。登山者はシュラフの持参が必要。
(四)外国登山者は登山予定日の90日前までに隊員名簿3部、登山計画書1部、パスポート或いは外国人居留証(滞台合法居留証)のコピー1部を当協会に送付することが必要。当協会は送付された上記の資料に基づき、登山予定日の一ヶ月前に国家公園管理処に入園申請書類を提出。国家公園管理は抽選により入園許可証を発行。抽選に外れた場合、登山予定日を変更し、再び申請することが必要。
(以下、省略)
 
また、今回経験した台風が襲来する場合は、下記の様な規制があります。
 
国家公園法第十九条災害防止救助法:
台風が襲来する時、全面的に入園活動を禁じる。台風警報が発布されている間、すでに入園許可証をもらった場合、その許可証は国家公園生態保護区管制要点第八条に基づき、廃止され、無効となる。再び、その地域に入りたい場合、新たに申請する必要がある。台風警報が解除された後、災害復旧の状況により、入園活動の申請を受理する。
(以上)

勿論、日本における登山やハイキングに係る規制は、あります。大雑把に言えば、冬期を中心とした積雪期に危険だから入山制限をしますといったルールですね。具体的には、富山県登山条例と群馬県谷川岳遭難防止条例が該当します。
登山に限定しなければ、気象庁が発表している「噴火警戒レベル」の、5段階中、「レベル3」となれば、対象となる火山への入山が禁止されます。鹿児島県の桜島、霧島山などは、よく知られていますね。
まあ、無理に登らなくとも楽しみは、山の麓に沢山あります。例えば、冒頭で言及した台湾では、食の楽しみ、ローカル線の楽しみ、サイクリングの楽しみ、名所旧跡巡りの楽しみ、等々多くを満喫しました。
その楽しみの前に、中華民國山岳協會の林さんに「再び、その地域に入りたい場合、新たに申請する」多大な努力をしていただきましたが、結局、ルートの崩壊、倒木でアプローチできませんでしたが、その姿に感謝しつつ、新たな発見、体験をする機会をいただきました。同行した仲間たちは、若い頃に世界を駆け抜けた経験があって、気持ちの切り替えの早いこと、ハヤイコト、流石だな~と改めて感心しました。

何れにしても後程少しばかり言及しますが、登山に係る然程の規制がない日本です。そんなことを念頭に見回すと、自由が前提の米国、ヨーロッパなど、少なくとも自然保護を基本とした各国にどこでも規制があります。
世界中には、山の危険だけでなく、人間から受ける危険が沢山ありますね。外務省海外安全ホームページを覗くと、「国・地域別の海外安全情報」があります。多くの黄色と赤色の地域がありますね~、困ったものです。関連する規制も各国にありますが、今回は、「規制_その1」として、その話題をスキップしましょう。

山といえば、先ずはヒマラヤです。その中で多くの人が訪れるのは、ネパールですね。先ず、懐具合を心配するのは、私のように(?)ビンボーな多くの人の悩みですね。
例えば、私は、懐具合の事情もあって、然程の興味がない地域になっているエヴェレスト等があるネパールを見てみます。ネパールは、ベースキャンプ(約標高5300m)より上に行く登山者に高額な入山料、1人当たり250万円をエ求めていました。観光で外貨を稼ぐ事情がありますが、それでは高額と判断したのか否か、2015年度から7人グループで申し込むと780万円にしたそうです。詳しいことは、調べていませんが、最近、1人でもグループ参加でも入山料は120万円と聞きました。どうしても、格安で登りたい人たちは、「guided expedition」で公募隊を検索して登っているようです。それでも、高いですね。そして、快適な居住環境、ルート工作済み、酸素ボンベ付き、コック付き等々の登山ですので、+アルファの要素を含めて公募隊の料金差はとなりますね。
それに対して、例えば、ペルー・アンデスのワスカランが位置するブランカ山群では、国立公園の入山料(多分、料金改定はあったかもしれませんが、シーズン料金US$20程度)ですので、雲泥の差ですね。
台湾・玉山では、入山許可と入園許可の申請費用は、1人当たりNT$1,000です。勿論、その他+アルファの若干の費用も加算されます。
費用のことばかりですと気が重くなりますので、自然保護の観点からの規制に目を向けてみます。富士山は、世界自然遺産ではなく、集客に努力している山のようですので、環境保全と観光の両立が可能な1日当たりの登山者数の設定をユネスコに提出することとして自然保護の話はスキップします。
よく知られている入山制限の事例は、ニュージーランドで人気のあるミルフォードトラックとルートバーントラックがあります。入山規制は、ミルフォードトラック48名/日、ルートバーントラック50名/日の限定です。トレッキングルートは、ロッジからロッジを一方通行で進みます。


国立公園の発足は、世界最初の国立公園は、1872年にアメリカ(イエローストン)、1909年にヨーロッパ(スエーデン)で、何れも自然保護の観点がベースです。日本は、1934年です。
また、自由の国、アメリカでは、各州で登山規制がありますので確認が必要です。アラスカを除くと、米国の最高峰となるホイットニー(4418m)は自然保護の観点から季節によって事前手続きや抽選などがあります。
また、若干古い資料ですが、「ヨーロッパアルプスの自然公園(土田勝義氏)」を見ると、オーストリア山岳会は、出版、ガイド、研修、自然保護の普及活動、そして、山小屋の国立公園の中で様々な事業を運営しているとのことです。山小屋の新規開設、増改築の許可権限があるとのことです。オーストリア山岳会への入会条件は、「自然を愛し、自然保護に務める」だけで、あれやこれや規制という行政が前面に出る姿のシンプルさが気に入りました。
今回は、この程度で言及を終えますが、来るものは拒まず状態の日本は、もしかしたら若干困った状況に向かう傾向のある規制内容なのかもしれません。次回、その2を記述するまでにまとめてみたいと思います。

(18/October/2016)