トップ > ブログ一覧 > 「規制」を分かり易く表現すると不都合?

2016-07-18

「規制」を分かり易く表現すると不都合?

  • 規則を「rule」と表現すると、何となく受け入れ易い感じになります。それが、「regulation」となると、法律的に指図される規制の要素が圧し掛かって、堅苦しい印象ですね。
    私は、仕事で臨床試験に係る仕事も一つの領域としています。例えば、「ヒトを対象としての試験を臨床試験といいますが、治験は、・・・」と説明したとしても、多くの人にとっては、些細な違いにしか思えないと思います。また、そんな説明も退屈でしょうね。
    一般的に、法的な記述は、読んでも大変分かり難い内容です。そのようなこともあってでしょうが、法律の条項の下に、施行規則といった類を定めています。実は、それさえも分かり難い内容ですので、規制する側、つまり、当局は、通知やら事務連絡で、更に具体的な説明を加えて関係者に伝えます。専門家は、納得顔になりますが、まあ、門外漢にとって分かり難く、場合によっては、誰が最終的な責任を負うのかもイマイチ分かり難かったり、文字の多さだけでウンザリすることになります。

    私は、仕事ですので、懸命に理解する努力をし、幾つかの資料作成に首を突っ込んでいますが・・・

    《IRB(治験審査委員会)も倫理性を優先しています。》



    時折、臨床試験に関連しての不祥事のニュースが話題になりますが、少なくとも倫理性を優先した「治験」については、正しく周知する微力を注ぎたいと思っています。
    また、規制とは言っても、創造性まで抑えるわけではないでしょうと話す場が時々あります。
    臨床試験に係る「regulation」の話は、これ以上記述しても、仕事で馴染みがない多くの方にとって退屈な内容の続きとなりますね。
    何かと“What's what?.”(ちんぷんかんぷん)ではなく、共通の理解が出来る工夫をと期待するに留め、「自然」に係る話題に移ることにします。

    さて、「石川県指定の天然記念物「白峰百万貫の岩」に、ロッククライミング用の「ハーケン」と呼ばれるくさびが少なくとも六本打ち込まれていることが、県教育委員会への6月27日の取材で分かった。県文化財課が確認によると自然公園法違反や県文化財保護条例違反の恐れがある。」といったニュースがありました。
    百万貫の岩は、1934(昭和9年)の手取川流域の水害の際に、手取川支流の宮谷から流されてきた巨大な岩で白山市白峰地区の名物となった高さ16m、周長52mで、2001年12月、石川県指定史跡名勝天然記念物に指定された岩です。

    《写真 天然記念物》

    そもそも、今回のニュースになった石川県の天然記念物(英:Natural monument/独:Naturdenkmal)は、下記の様に分類されています。
    特別天然記念物天然記念物天然記念物名勝
    (地方自治体)県指定天然記念物
    また、名勝なる文化財には、特別名勝、名勝、天然記念物名勝、県指定名勝、登録記念物なる分類があります。法律をめくると、「文化財保護法第109条第2項の規定により、天然記念物のうち、世界的に又は国家的に価値が特に高いもの、として特別に指定されたものを特別天然記念物という」とあります。加えて、「国が指定するもののほかに、都道府県や市区町村においても天然記念物を指定することができる」とあります。つまり、国の天然記念物は文化財保護法に基づいて文部科学大臣が指定します。そして、地方自治体指定の場合は、文化財保護条例に基づいて指定するのでしょうが、さて、誰が指定するのか???
    まあ、何れにしても大切に保護されることになります。
    その様な対象ですので、ニュースが流れたとたん、クライミングをする連中へは、非難ゴウゴウ沸き立ちました。クライミングに興味がない人たちにとっては、経緯はどうであれ、非難するのは当然化もしれません。
    一方、クライミングに興味のある私は、多少の事実確認をしたくなりました。
    2001年12月石川県指定史跡名勝天然記念物に指定されましたが、上記もニュースの後、「少なくとも1995年に同様の金具があったことが国土交通省金沢河川国道事務所や同県教委への取材で分かった。金具はイベントで使われ、岩はその間に県天然記念物に指定された。」とのことです。

    実は、その地域は、過って、「白峰ボルダー」エリアでした。過って、下記の様な掲示がありました。

    【百万貫岩エリアにおけるお願い】
    ●過去に大水害の歴史があり、村には百万貫岩に対し信仰的な想いをいだいている方もおられる。不快感を与える様な行動は避けること。
    ●百万貫岩は近々天然記念物に指定される可能性がある。岩の景観をみだす行為をしてはならない。(現在打ってあるボルトは、近日撤去する予定になっている)
    ●ボルダリング後の岩の掃除はもちろん、環境保護を徹底する。
  • 所謂、ボルダリングですが、そのエリアだったとすれば、「フリークライミングの一種で最低限の道具(シューズとチョーク)で岩や石を登るスタイルですので、ニュースにあったハーケンの連打があったとのことは考えられません(ニュースにあった金具とかハーケンの表現は、ボルトですが)。フリークライミングでは、岩にハーケンやボルトなどを打たない、打ってはいけないというのがクライマーの意識」ですので、何かスッキリしません。
    《20年以上前に合った古いボルトは、写真のような感じです》

    クライマーには、クライマーの「rule」がありました。その後の「regulation」で天然記念物に指定されたのですが、その間、打っていたか否か確認できていないとしたニュースソースは、大袈裟に言えば、関係者に疑心暗鬼を生じさせたかもしれませんね。規制側は、手続き的なことはしっかりとなさっているはずですが、実行、判断は人間ですので、目が行き届かないこともあるかと思います。
    最近の「regulation」では、とりあえず裁量行政で対応していこうという項目が多いようにも思えます。国際化への対応、産業の育成、手続きの簡素化など、急ぐ考えも理解できますが、明文化が後追い的になると責任の取り方が曖昧になるのではないでしょうか?
    今回の天然記念物のニュースですが、最近まであったのかなかったのかも曖昧でニュースになりました。規制側は、天然記念物指定の手続きの書類はあるのですが、これまでのチェックの記録が曖昧のようです。突然飛び込んだニュースですが、例えば、20年程度でも、錆(劣化)の状況を見れば、昨日今日に岩に打たれたものではないのは、判断できるはずです。単純に、「登る奴の気が知れない」、「マナーが悪い」、「大切なものを破損するなんて」など枚挙にいとまがない批判を見聞きしながら、事実は何か、その「rule」が存在しているのか否か、そして、文化財と「regulation」の関係を振り返るべきではないでしょうか?
    日本国内には公的に保護・維持している天然保護区域が幾つもあります。単に観光客を呼び込むだけで指定された区域ではないのは明らかです。決めるべきことは決め、守るべきことを守るのは人です。規制を検討し、運用するのは人です。「規則は破らるためにある(Rules are made to be broken)として(?)、交通違反取締的な対応で大切な自然環境を維持していけるとは思われません。
    例えば、上高地はその美しい景観から、「特別名勝」と「特別天然記念物」二つの称号を与えられています。観光客を呼び込むための称号が大切なのではなく、日本の貴重な自然環境が大切なのは論を待ちません。規制は、どのような領域にしても、専門家が内容を理解できればよいのではなく、大切なものを守るために、殆どの人が読んで分る文面にしていただきたいものです。私も、そのような視点で、今後の努力を続けたいと思っています。
                                          以上