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2016-04-24

大地震の被災から山のトイレについて思う

熊本・大分では、14日の地震発生以降、避難所は、今日(24日)でも600ヵ所近く、7万人近くの人々が不自由な状況とのことです(東日本大震災時と同じく、カウントし難い自主避難者数は?)。早く、過っての日常が戻ることを祈ります。
今の私は、5年前のように直ぐに駆けつけることができませんが、多くのボランティアの皆さんも活躍すると思っています。
様々な課題を克服しつつあると思います。そのような中、水やトイレを含めた生活環境の悪化が懸念されているようです。実際に、ノロウイルス対策などが典型かもしれません。そのようなことは、既に現地の専門家の皆さんが鋭意努力しているということです。

今回ブログは、震災を念頭に置きつつ、山と「トイレ」について情報共有させていただきます。登山といった活動は、衣食住の側面から言えば、自己完結型の遊びですので、トイレについて、通常、心配していないかもしれませんが、結構頭を悩ますことも多いことです。
日本人は、多分、排泄行為について、従来からシャイだったかもしれません。ましてや、生活様式の変化で、多くは洋式トイレ、そして、水洗、更には、ウォッシュレット、何よりも、子供たちは抗菌玩具や個室確保の時代で育っています。避難所でのエコノミークラス症候群の心配はお年寄りに限ったことでないかもしれません。

私が、登山を始めた時代は、大空の下で排泄し(「雉打ち」と言います)、グループで行動する場合、仲間から見える場所でオオキジを打っていました。しかしながら、既に、若い世代の登山家でさえ、それは昔話として聞く話題かもしれません。もしかしたら、昨年、2015年12月22日に北海道大雪山系の黒岳で滑落して亡くなった有能な女性登山家の谷口けいさんを思うと、残念でなりません。
私は、時折、トレッキングのガイドをしますが、企画書や事前説明の中で「コース上のトイレの設置場所」を明らかにしてからスタートします。また、ツエルトはシェルター代わりに、そして、もしもの時のために「携帯トイレキット」を持参しています。とはいえ、次のトイレまで我慢する人ばかりです。特に女性は、大きなハンディとなっているのは明らかです。もしかしたら、過っての「雉打ち」とか「お花摘み」など死語であり、安易に促すこと自体が禁句になっているのかもしれませんね。




国内、例えば、屋久島や早池峰山、美瑛富士などでも携帯トイレは推奨されていますが、それを持ち帰る登山者がどれ程いるのかも気になるところです。
 
例えば、日本山岳会の自然保護委員会・科学委員会がwebで「山のトイレ・マナーノート」を公開しています。大変参考になる内容と思っています。
http://www.jac.or.jp/info/annai/toilet.htm

日本の山の様相、そして、登山客を考慮しての内容ですので、多くが共感できます。一つ気になることとしては、「オーバーユーズとなる入山は極力避けましょう」とありました。私が住む近くの高尾山は、年間250万人以上が訪れます。そこまでの人数ではないのですが、富士山、尾瀬、北アルプス・槍ヶ岳の夏の行列は、例年見ることができる光景です。Webの中でも「今すぐ大多数の合意の得られる現実的なトイレ問題の解決にはなりそうにありません」とありました。それぞれの地域での努力も知っているつもりですが、よりよい打開策が必要でしょうね。
例えば、オーバーユースということが気になるとすれば、思い切って入山制限や多少高額の入山料を頂戴するという対策も短絡的に浮かぶのですが、そこで生活している人々や収入の分配等でもめることも想像できます。きっと、折り合いをつける難しさがある筈です。
でも、世界的なトレッキングコースとして、私の好きなニュージーランド・ミルフォードトラックとルートバーントラックでは、トイレ対策が出来ているような気がします。多分、今でも、一日48~50名に入山者数を制限している筈です。景観の良い場所にある仮設トイレは、外観が筒状で、小奇麗で、ヘリで回収することも結構知られています。人数制限の山と言えば、日本の南隣、台湾・玉山も外国人を合わせて一日100人程度の筈です。

 

ちなみに、山のトイレを設計するとすれば、幾つかの形式が思い浮かびますね。
自然浸透式:過っての富士山を含む山小屋の多くは、当然のごとくでした。
持ち出し式:上記のNZのように、ヘリコプター離発着可能な場所になります。
生物処理式:自己処理型(通称バイオトイレ)で、微生物による分解能力しだいです。

個人的には、バイオトイレが気に入っているのですが、排泄量(入山者数)で限界がありますね。下段の写真は、高尾山近くで森づくりをなさっているグループが作ったトイレです。昨今の様式・水洗トイレに慣れている皆さんからは、臭いを含めて賛同を得にくいかもしれませんが、オガクズ(木くず)をかけ、使用者人数も極少なこともあって、意外だなという顔をされます。なお、写真のトイレは、ユニセックス(男女兼用)ですので、経費も安いのも当然です。



数年前、私は、お腹を壊したまま、高度順化のために、5,500mを越える山の雪稜を気心知れたガイドと二人で辿っていました。その折、我慢できなくなって、その場で“大”をしましたが、私のパートナーは、周りの山々の景観をノンビリと楽しんでいました。氷河に落ちた黄色い物体は、何十年後、いや、百年後かにアマゾン川へ下ることになるでしょう。
 
下段の雪の中にある建物は、ペルーのある山の麓にあるトイレです。くみ取りもできないコンクリートで作った古いトイレですが、入山者が少ない時期でしたので、然程気にもならないトイレでした。もう一つは、細長いとんがったテントが小さく見えますが、トイレテントです。移動時に使いますが、中に穴を掘って、終わってから土をかけます。これも、アンデスのあまり人の来ない山だから許される光景かもしれませんね。



 

なお、自然分解することを念頭に、トイレ“大”が我慢できなくなった早急の時、登山道や水辺からどの程度離れたら良いのでしょうかと聞かれることがあります。
「“大”の場合は、なるべく沢から離れ、穴を掘ってやってください。一般的には、深さ約10㎝の穴を掘って埋めるようにしましょう。」などと伝えています。
また、上段で紹介した日本山岳会のwebでは、大凡下段のように伝えられていました。

  1. まず、麓で用を済ませてから入山し、山中ではしないのを原則としましょう。
  2. 排泄場所は、沢や水辺からできるだけ離れ、‘水場’の上流は絶対に避けましょう。
    地形や植生の状態にもよりますが、一つの目安として、水際から少なくとも20~30mは離れましょう。
  3. 植物が生い茂って落ち葉があり、雨水で流失の恐れのない地点を選びましょう。
    植物の少ない砂礫地や岩場は避けて下さい。
プライベートなことですが、年初に妻がタスマニアのハイキングへ行きました。そこにあるポスターには、「トイレ“大”は、キャンプ地や水場から100m離れ、15㎝の穴を掘ってやるべし」とあります。どこから何メートル離れて、どの程度の穴などかは、その地域ごとの目安と考えて適切に対応しましょうということになりますね。


地震被災をなさっている皆さんのご苦労を思いながら、いつの間にか脱線してしまいましたこと、ご容赦ください。
震災を含めて、排泄という大切な生理的日常に我慢を強いられる状況を思うと、もっと開けっ広げに「できる」場づくりをしたくなりました。小さい頃から、野山で遊び、野山で経験することからの学びの一つにトイレも自然体験研修(学校)のカリキュラムに加えたいと思う今日でした。